アポ電話をするのが嫌になる理由と、楽しくする方法

営業といえば、どんな仕事?
・相手と商談して説得する?
・金額の交渉?

こういったことが営業、というイメージが強いですね。
でも、そこまでたどり着くには、見込み客と出会うための作業が必要です。
つまり、「アポ取り」です。
そのため、営業マンは、電話でのアポ取りがとても重要となります。

私の初めての営業は、能力開発教材を販売する仕事でした。
当時25才。
「松橋さん、販売の仕事を6年もやってるなら、営業の仕事は楽勝ですよ。
私なんて今月数日しか働いていないのに、給料が100万です。
松橋さんなら、もっと稼げますよ!」
そんな甘い言葉に誘われて、完全歩合制の仕事に飛び込みました。

成功ノウハウを教える教材ですから、中小企業の社長や、人事部の人が対象です。
電話帳や就職雑誌からピックアップしてアポ取りをしていました。
そう、きつかったのが電話帳です。
片っ端から無作為に電話していくので、当然、罵声を浴びっぱなしです。
アポが昔の職場の友人に取れましたが、最後には「こんな詐欺商品を買うわけないでしょ」とか言われる始末。

確かに、先日まで、ミュージシャンを目指して、しょうがなく販売員を続けていた25才に、「成功」を語るのはギャップがありました。
でも何よりも、片手間ですぐに売れると思っていたから、プレゼンの練習もロクにしていなかったのでたどたどしい話だったと思います。
そんなときに、ブリタニカの英会話教材販売の営業マンと出会いました。

「松橋さん、その教材って社長相手の営業ですよね?厳しくないですか?」
「そうですねー、入社したけど全然ですよ」
「20代で社長に成功を語るのは難しいですよ。英語なら若い人相手なので余裕で売れますよ」

彼は私よりも年下で、大卒2年目。
ブリタニカに入社してほんの1年目で管理職。
月収は平均すると40万円ほど稼いでいるという。
自己啓発教材の営業に見通しが持てなかった私は、すぐにその話に乗って転職しました。

そのブリタニカのオーナーは青木仁志さん。
今では営業研修業界では知らない者がいない存在ですが、当時はまだ、アチーブメントという会社を立ち上げてまもない頃。
ブリタニカの支部の運営と、アチーブメントの創業社長をしていました。
24才の彼と、青木さんに学んだことはたくさんありました。

販売の仕事を6年近くやっていましたが、商品説明をして、最後に背中を押すというものだというくらいの認識しかありませんでした。
ところが、「営業は科学」「営業は確率の仕事」だというのです。
この言葉はとてもインパクトがありました。

アポイントは確率の仕事

ブリタニカでも、電話アポイントを取る仕事が中心です。
朝10時から夜10時まで電話をかけ続けます。
(今の法律では、夜8時までだそうです)

最初は、やっぱり電話帳。
もちろん、一般宅へ電話するのは効率が悪すぎるので、
会社相手です。
タウンページで「英語に興味はありますか?」と電話していきます。
まあ、断られるのがあたりまえです。

次に、音楽大学の卒業名簿を手に入れました。(今は、ありえない笑)
社会人と違って、まじめな音楽大学生は、とてもよく話を聞いてくれました。
少しずつアポが取れるようになりました。
そのときに学んだことは、確率を意識すること。

100件電話して3件アポ取れればOK。
9件アポが取れても実際すっぽかす人がいるから、
そのうち5件会えて、1件売れれば成功。

すると、
電話    300件
コンタクト 90件
アポ      9件

プレゼン     5件
契約       1件

つまり、
・300件中、
・実際につながらないのが210件、
・90件中、81件に断られる。
・対面プレゼンで、5人中4人に断られる。
それでも営業マンとして合格ということです。

営業は確率の仕事だ!
ということで、
規定の数をこなしていけば、結果が出るのです。

言い換えると、早く一定以上の人に断られないと、
契約してくれる人にめぐり合えないという考え方です。

アポ電話をするのが嫌になる理由

電話をかけていると、中には怒りまくる人に当たることがあります。
たかが電話したくらいで、
「そこまで怒らなくてもいいだろう!」
と思います。

多くは、抱えているストレスを、ここぞとばかりに発散する対象になってしまったのでしょう。
若くて自信がなさそうで、トークも下手そう。
ストレス発散の相手としては格好の餌食です。
心理学的に分析すると、同じ年頃で、言うことを聞かない息子に対する怒りや不満を、私にぶつけていたのかもしれません。
若い女性も、年配の男性から絡まれたら、やはり、関係がうまくいっていない娘とのいらだちを、代わりにぶつけているのでしょう。

そんなふうに文句を言い続けて、しかも電話を切ってくれない相手には、かなりエネルギーを消耗します。
へこむ気分たまっていいます。
すると、電話機を目の前にしながら、アポイント電話をするのが嫌になって、なかなか受話器を持てなくなることも
何度もありました。

これは、マイナスのアンカリングが作られてしまったからです。
アンカリングとは、五感の刺激が特定に感情と結びついた状態をいいます。

●五感と感情
五感)
・視覚  机の上の電話機が見える
・聴覚  怒鳴り声が聞こえる
・体感覚 受話器を握る手の感触を感じる

感情)
・恐怖、怖れ、悲しさなどの感情

机の上の電話機が見えて、
怒鳴り声が聞こえて、
受話器を握る手の感触を感じると、

「恐怖や怖れがわき上がり、悲しい気持ちになる」
というアンカリングが成立しています。
当然、電話機を見ると、アポ電話をするのが苦痛になるわけです。

アポ電話をするのが大好きになるには?

では、全然平気に電話をし続けられる人は、
どんなアンカリングがあるのでしょう?

机の上の電話機が見えて、
電話機を握ると、

お客様の「その商品、いいね!ぜひ聴きたいよ」と言われる。
あるいは、「よくやったな!」という上司の声が聞こえて、
気分が上がる、ポジティブな気分になる。

というアンカリングが成立しているのです。

電話をする前に、
「あ~あ、また怒られたらどうしよう」

こんなふうに思ってたら、
アポ電話はきつくてしょうがありません。
嫌になって当然です。

早く断られろ

そこで、営業は確率だということを思い出してください。
英会話教材だと、一日100件電話したら、3件ほどアポが取れると言いました。
あなたの商材と、リストは、どれくらいの確率でしょうか?
コンタクト30件でアポ1件が平均の数字なら、
早く29人に断られることです。

ゴールを、アポイント獲得におくと、
苦痛が大きくなります。

ですから、
「今日は30人断られたらOK」
でいいのです。

いつもいい気分でアポイントを取れるようにするには?

いつもコンスタントな成績を出すためには、
スポーツ選手が参考になります。

引退したイチロー選手は、
打席に入るときは、同じパターンを守ります。
バットを立ててから袖をつまみ、いつもの構えに入ります。

ラグビーで一躍ヒーローになった五郎丸選手は、
キックをする前には必ず、人差し指を立てて両手を握るというポーズをつくります。

このようなルーティンワークが、感情を一定にさせているのです。
あなたが営業電話をする前には、どんなルーティンワークをしていますか?
果たしてそれは、やる気を上げるものですか?

どんなものを見て、
どんな言葉を聞いて、
どんな身体感覚を使って、
どんな感情を引き出していますか?

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